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【 PRODUCT REPORT 】nakesのニットブラができるまで。ものづくりの現場をレポート

【 PRODUCT REPORT 】nakesのニットブラができるまで。ものづくりの現場をレポート

皆様、こんにちは。nakesのデザイナーの古川円です。

日頃よりnakesを愛用してくださるお客様、2025コレクションからnakesを知り、はじめてオーダーくださったお客様、nakesってどんなブランド?と興味をお持ちの方々に、nakesのものづくりの現場や、そこに込める思いを少しでも知っていただきたいと思い、nakesのアイテムを製造していただいているニット工場へ行ってまいりました。

工場へ行くのは2度目でしたが、その細やかな作りと、熱い思いにあらためて感動しました。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

今回伺ったのは、ブランド初期からのメインアイテムである、ニットブラトップを作っていただいている工場です。冬の時期は雪深くなる北陸地方、新潟県内の生産地。

国内でも、編み目の細かいハイゲージを得意とするニットの生産地帯で、nakesのアイテムを作っていただいているのは、昭和初期より続く老舗の工場です。

 

 

東京から新潟へ。ローカル線を乗り継ぎ、工場へと向かう。

 

 

まずは東京から新幹線で新潟駅へ。そこからローカル線を2本乗り継ぎ、ニットの産地へ向かいます。地方の沿線ということもあり電車の本数が少ないのですが、慣れない場所にうっかりしていた私は、早速新潟駅で乗り遅れて、予定通りの時間に到着しないという失態......。

しかし、迎えてくださる工場の方々は、電話口でも優しい言葉をかけてくださいました。工場の方々は本当に温かく、人情味あふれる方々ばかりです。これまで、ひとりでもnakesを続けられたのは、こちらの工場と人あってこそだと実感しました。

工場に到着すると、2025年の新作アイテムをちょうど生産中とのことで、早速案内していただきました。

 

 

2025コレクションができるまで。ニットブラの製作過程。

 

・工程1.パターン(図案化)


ニットアイテムの生産は、一般的に次で紹介する「プログラミング(柄組)」の工程から始まることが主流なのですが、こちらの工場では「パターン(図案化)」から入り、一度型紙を起こします。ニット工場ながら、パタンナーがいることが、こちらの工場の特徴かつ強みです。

パタンナーがいることで「プログラミング」だけでは表現することの難しい、細やかなシルエットの形成と仕様を、デザイナーの意図を聞き出しながら、よりイメージに近く具現化することができます。

 

 

工場に所属するパタンナーは数人いらっしゃるのですが、nakesはいつも同じ女性にメインで担当いただいています。この日訪れた際に、私がメモ程度に描いたイラストを、「かわいい!」と、仕様書と一緒に大事にとっていてくださっているのを見つけて、なんとも嬉しくなりました。

 

 

・工程2. プログラミング(柄組み)

 

ニットの型紙は、通常の縫製だけではなく、ニットの仕組みを理解していないと作ることができません。その上でひかれた型紙と仕様書が、次にプログラマーの手によってデータ化されていきます。プログラマーの机の上には、専用のパソコンやツールがたくさん。使い込まれた計算機に仕事の綿密さを感じます。

 

 

・工程3. 編み立て・機械


 

プログラミングによりデータが完成したら、次に編み立ての工程へ入ります。パソコンから転送されたデータを元に、編み機の上にセットされた糸が機械の中に吸い込まれていきます。機械が左右に動いて糸を紡ぎ、下の排出口から編み立てられたニットが出てくる仕組みです。

ざっくりいうと3Dプリンターのようなイメージが近いかもしれませんが、大きく違うのは、最初に人の手によって無数の針に糸をセッティングする必要があること。機械を動かしたからといって、パッと簡単にでてくるというものではありません。

 

 

 

・工程4.プレス(加圧・整形)

nakesのアイテムは身体にフィットするよう、伸縮性のあるストレッチ糸を入れています。そのため、編み上がったパーツは縮んだ縮尺のままで編み機から出てきます。縮んだパーツごとにプレスで熱をかけることで、ようやくひとつのパーツとして完成します。

ストレッチ糸が縮むことを前提に、出来上がりの寸法を逆算してプログラミングされており、その技術の高さを感じます。

 

:同じアイテムのパーツ前後。編み立て後すぐはまったく違う縮尺であがってくるが、プレス後、右のように指示通りの寸法に落ち着く。

 

 

・工程5.リンキングと縫製

 

ニットならではの手法で、パーツごとに編み立てたニットを繋ぎ合わせていく作業をリンキングといいます。なんとなく聞いたことはあっても、実際に目にされたことのある方は、少ないのではないでしょうか。

リンキング機は、筒の上部に串のような細かい突起が並んでおり、この突起ひとつひとつに職人が手作業でニットの編み目を通していきます。2つのニットのパーツの端を綺麗に重ね合わせ、セットが完了したら機械をろくろの様に回転させて、機械上部の糸を通してパーツを繋ぎ合わせていくという仕組みです。

ゲージ(編物で基準となる目と段の数)によって機械が異なり、ハイゲージほど細かく、目数が多くなります。ちなみにnakesのアイテムは全てハイゲージなのですが、まさに職人技!といった感じで、細かい目にすばやく目をとおしていく職人に、ただただ目を奪われました。

国内ではリンキングを行える職人が減ってきているといわれています。nakesではニットブラの肩紐の接続部分などにこのリンキング手法を取り入れており、肌あたりが本当にフラットです。

 

 

nakesではリンキングも縫製もどちらも用いており、部位によってその手法を使い分けています。縫製も、ニットの縫製は一般的なカットソーなどの縫製と比べて難しく、特にnakesのニットは伸びが良いこともあり難易度の高いアイテムです。しかし、こちらも熟練の職人の手によって、綺麗に縫製されていきます。

 

 

・工程6.ソーピング(洗い)

 

糸種によって事前に洗いにかけることがあります。

一般的なニットはご家庭で洗濯できないものも多いですが、nakesはご家庭でもお洗濯可能なアイテムに仕上げるために、事前に洗いをかけて極端に縮まないように調整したり、肌当たりを良くするために洗いをかけているアイテムもあります。

 

 

・工程7. プレス(仕上げ)

 

最後の仕上げにプレスをかけて出来上がりです!ここでさらに指示した寸法にあがるように、最終調整を行います。

 

 

・工程8. 検品

 

検針機にかけて針が残っていないか確認し、最後は1点1点、人の手・目で検品して出荷となります。

 

 

最後に、2025コレクションに向けて。

ひとつの小さなアイテムをつくり上げるために、こんなにも日本の技術と人の手がぐっと詰まっています。

こちらの工場ではじめてニットブラを依頼した際は、当時国内外に似たアイテムの生産はなく、「下着をニットで?」という難問に真摯に向き合っていただき、形になるまでかなりの苦労と時間を要しました。

しかし5年にわたりタッグを組んでいると、工場の方から「こういう糸はどうか?」「こういう仕様はどうか?」と提案をいただくことも増えて、nakesのクオリティもどんどんと上がってきました。

国内だからこそできるクオリティと、人の触れ合いがあったからこそ生まれた仕様やデザイン。2025年の新作アイテムはこうして積み上げてきた技術と、nakesの感性が合わさった最新作です。

お届けまで楽しみに、お待ちくださいね。

 

 

nakes:

madoka furukawa