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【 JOURNAL #3 】「インナーの役割も担うニットウェア」を叶えるために。nakesのアイデアを高い技術で支える、新潟県五泉市のものづくり

【 JOURNAL #3 】「インナーの役割も担うニットウェア」を叶えるために。nakesのアイデアを高い技術で支える、新潟県五泉市のものづくり

ニットウェアでブラパッドを入れられる構造をつくりたい。理想を叶えるための試行錯誤と、新しい手法の開発

「肌触りの良い糸を使用し、柔軟に伸縮し優しく包み込むニット技術で仕上げる。そんなアイテムを肌に直接纏いたい。」

デザイナー 古川の自身の悩みから生まれたアイデアを実現し、nakesのコンセプトである“服とインナーの両方の役割を担うニットウエア” をつくり上げるには、当時(2016年頃)おそらくまだ世の中にはなかったニットウェアでブラパッドを入れられる構造を叶える、新しい手法の開発が必要でした。

いろいろな伝手を頼りに技術開発に協力いただける工場を探していたところ、ようやく一社、古川の強い思いを受けて、ニットカーディガンのポケットをつくる技術を応用して、脇部分からパッドを差し込める構造を可能にしてくださる、大阪の協力工場を見つけることができました。

こうして2018年よりnakesのファーストコレクションがスタート。古川が思い描いていた“ニットウェアでブラパッドを入れられる構造”をもつアイテムシリーズを実現し、発表しました。

ニットの技術をインナーに用いることによりジャージー生地で縫製される一般的なブラトップに比べて素材の無駄が出にくく、縫い目を必要最小限にすることにより身体に優しく寄り添う、nakesのアイデアが詰まった理想的なアイテムを完成させることができたのです。




しかしながら、その後工場側の倒産トラブルなどが重なり、残念ながら同じ工場での生産継続が不可能になってしまいました。

着心地を重視することで生み出されたnakesオリジナルのブラパッド構造は、ランジェリーにちかい繊細な作りであるがゆえに、ニット業界の中では非常に珍しいアイテム。

高いクオリティーで同じ構造を再現することがかなり難しく、全国各地のニット工場へ出向き、ファーストコレクションのサンプルを持ち込んでは、断られる日々が続きました。



100年以上の歴史をもつ、誠実で細やかな新潟県五泉市のものづくりとの出会い

新しい工場を探す中で最終的に辿り着いたのが、国内のニットの産地の中でも繊細なものづくりを得意とする新潟県五泉市の工場でした。

100年以上に渡り、絹を織り、京都に納めることで発展してきた歴史をもつ新潟県五泉市は、絹織物で培われたものづくりに対する感性がニット産業にもしっかりと受け継がれていることから、生産の多くが国外へ移行した現在でもドメスティックブランドからの熱い支持を得ている地域です。





nakesのアイテムの生産を快く承諾してくださった工場の技術者の方々は、持ち込んだサンプルからさらにもう一段階細かい編み目にすることで、以前よりも肌触りの良さをあげる改良を加えるなど、古川が求めるデザイン、シルエット、着用感のこだわりに対して、ミリ単位の調整を行う高い技術で答えてくださいました。



nakesの気持ちよさをつくる、編み技術の使い分けと緻密なパターンメイキング

こうしてはじまった新潟県五泉市のニット工場でのものづくり。

nakesでは、シルエットや着心地を追求するために、アイテムによって複数の編み技術を使い分けて生産しています。nakesのアイテムは一見シンプルですが、古川のアイデアと技術者たちの工夫が随所に詰まっています。

・「成型編み」

nakesのブラトップシリーズは、制約が少なくより自由度の高い「成型編み」にこだわりつくられています。「成型編み」は一般的な洋服と同じように、ニット生地をパーツごとにつくってから縫い合わせる、とても手間がかかる技術ですが、繊細で緻密なデザインとシルエットをつくり上げることが可能です。

nakesではブラトップの前見頃がバストの厚みで引っ張られてシルエットが崩れたり、短く感じないように、編む前のパターン・メイキング(型紙製作)の段階で前見頃の丈を長く設定し、圧迫感が少なく心地よい着用感を叶えています。また、縫い代の幅が出にくい手法で編むことにより、脇部分に縫製糸が直接肌に当たらない配慮を施しています。

デザインのポイントにもなっている華奢なストラップは、細いながらバストを支える強度と伸度を兼ね備えた縫い方を採用しており、「ホールガーメント」では表現できないnakesならではのデザインと着心地を、新潟県五泉市の巧な「成型編み」の技術を用いて実現しています。

・「ホールガーメント」

縫い目のない筒状に、立体的に編み立てる「ホールガーメント」と呼ばれる技術。縫い目による肌への刺激が少ないため、肌の弱い方にも優しく着用していただくことができ、大量生産が可能なことから、世の中的にも大手が展開するニット製品などに使用される、人気の技術となりました。

一方で「ホールガーメント」は技術的な制約も多く、アイテムの前後の生地が同じ寸法になってしまうために、前身にバストの厚みがある女性の身体では、着心地やシルエットが損なわれる場合があります。 nakesでは、より女性の身体に寄り添うものづくりをしていきたいという思いから、あえてトップスには現状この技術を用いておらず、ボトムスのアイテムを中心に採用しています。





nakesが国内生産にこだわる理由。

古川のニットへの情熱と、そのこだわりに高い技術で最大限答えてくださる技術者の方々との信頼関係により、nakesの唯一無二のプロダクトは生み出されています。

日本に流通するニットは約99%が輸入品といわれる現在*ですが、国内の作り手が少なくなった今も向上心をもって受け継がれてきた技術を衰退させることなく、改良を重ねながらものづくりを行なっているニット工場の技術者の方々の、その精神と技術力こそがnakesが国内生産にこだわる理由です。

減少していく日本の技術に僅かでも貢献しながら、他にはない肌への優しさやフィット感を叶える品質の高いアイテムを、今後もたくさんの方にお届けしたいと思っています。



※参照 WWD 熟練技×テクノロジー 新潟・第一ニットの極上ハイゲージ【メード・イン・ジャパン特集】



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Words by Saya
Edited by Akiko