【 JOURNAL #5 】nakes 2026 新作コレクション ' Carve_ ' について

「その先にあるもの」を切り開く。
2026新作コレクションのテーマ' Carve_ '発想の原点

2026コレクションに nakes が掲げたテーマは、彫る、切り開く、という意味の ' Carve_ '。

発想の原点となったのは、昨年の春に72歳で亡くなった、彫刻家 船越桂さんの作品と、創作メモでした。

ー「美しい人を作るのではなく、人間の存在が美しく思える、ありえない姿を現出させる。」（船越桂さんの創作メモ）ー

造形の美しさを超えて、人の心に響く”存在の美”を創出しようとする船越さんの創作への姿勢に、深く心を打たれました。

”誰かを美しくしたいと思う以上に、自分でも気づかない魅力に気づいてほしい。クリエイションで「その先にあるもの」を切り開いていきたい。”

巨匠が残した言葉が自身の創作への意識と重なり、その気持ちに突き動かされるように生まれたのが、今回のコレクションです。

主役級のインナーからシルクソックスまで。
身体全体の美しさを追求するクリエイション

今回ブラトップアイテムの開発をしていく上で目標にしたのは「主役級のインナー」です。

これまで nakes は、何かと組み合わせて着るベースウェアとしての役割を意識してきましたが、2026コレクションではスタイリングの主役となる、前に出せるインナーを目指しました。

特に象徴的なのがスクエアネック型のブラタンク。19 世紀のコルセットを意識したシルエットと前後差のある裾、デコルテをより美しく魅せる胸元のカーブが特徴です。シンプルであることは大切にしつつ、無難には決して逃げない。そんなnakesらしいデザインへの思いを貫いています。

また今回のコレクションでは、胸元だけではなく身体全体で美しさを追求したいという思いから、ブラトップとも合わせられるシアーなトップスアイテムを増やし、ブランドでは初となるソックスもラインアップとして新たに加えました。

発売時期はずれますが、今回のコレクションの一環となるショーツも現在開発中です。

肌に寄り添う素材と、新しい編み地の開発

昨年のコレクションからさらにアイテムのバリエーションを増やしていますが、全てのアイテムにおいて天然繊維をメインで使用し、nakesのアイデンティティでもある肌への優しさを意識しています。

今回新たに開発したのは、オーガニックコットンの強撚糸をシュリンクさせた、少し透け感のあるオリジナルの編み地。肌に当たる面積が少ないことで、通気性が高まり、季節を問わず快適に着用することができます。この編み地は、ハイネックカーディガンや、ノンスリーブトップスに使用しました。

また、シルクを用いたハイゲージ（薄手）ソックスは、シルクの心地よさを日常的に楽しめるようにと開発しました。シルクは肌に優しい一方で、一般的な靴下の素材である綿や化繊に比べて強度が劣るのが課題でした。

そこでまずは工場探しからスタートし、ハイゲージを得意とする国内の老舗工場に依頼。程よい強度を持たせるため糸のバランスを工場とともに試行錯誤し、目にも楽しいカラフルなシルクソックスが完成しました。

日常に溶け込むベーシックカラーと、心の奥に響く「色」

ウェアアイテムは昨年のコレクションから継続し、今回もシックなトーンを中心に据え、日常に馴染みながら印象に残るベーシックカラーを追求しました。一方で、ソックスなどの小物は、スタイリングのアクセントになる赤や黄色を採用しています。

定番ブラトップの新色「チリレッド」は、船越桂さんの彫刻作品に見られる“混じり合う色彩”から着想。自ら水彩で試作を重ねて作り上げた、オリジナルカラーで染め上げました。単なる流行色ではなく、心の奥に響く色を纏うことを目指しています。

白や黒などベーシックカラーとも相性がよく、スタイルに凛とした存在感を添えてくれます。

ファッションを通して、女性たちが無理せずに前へと進む力をサポートしたい

昨年から今年にかけて、自分と同世代である30〜40代の女性と多く交流する中で強く感じたのは、誰もが前向きさと同時に、葛藤や悩みを抱えているということでした。

悩みながらもそれを受け入れ、自分なりに歩を前へと進めていく。その姿勢は勇敢であり、同じ女性としてとても愛おしく、ファッションの力で応援したいという気持ちを抱かせてくれます。

女性たちの日々のスタイリングに自然と寄り添い、ファッションがもたらす高揚を感じながら、無理せずに前へと進む力をサポートする一着となるように。

そんな思いを込めたnakesの新しいコレクションを、手にとっていただけたら幸いです。

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Words by Madoka.F
Edited by Akiko